近鉄東寺駅前の京都整形外科 肩スポーツクリニック(京都肩スポ KSS)

反復性肩関節脱臼の手術

反復性肩関節脱臼の術式

  • 世界的に有効な手術は2つにわかれます。当院は両手術に対応しています。

  • 鏡視下バンカート修復術(きょうしかバンカートしゅうふくじゅつ)は、肩関節の不安定性や反復性脱臼を治療するために、損傷した肩関節唇(肩の軟骨の一部)を修復する手術です。
    関節鏡を使用して最小限の切開で行われるため、侵襲が少なく、回復が早い手術方法とされています。

  • 烏口突起移行術は、肩の不安定性を治療するための手術です。肩が頻繁に脱臼する人に特に効果的です。
    まずは、手術の内容を図を使って簡単に説明します。
    詳しくはコチラ

鏡視下バンカート修復術

バンカート損傷とは?

バンカート損傷は、肩の前方脱臼が原因で、肩関節唇(グレノイドラブル)が前方に剥がれる、もしくは裂けることを指します。肩関節は可動範囲が広く、安定性がやや弱いため、スポーツや外傷により脱臼しやすい構造です。

肩関節唇は、肩の受け皿である関節窩(グレノイド)を取り囲む軟骨の輪状の構造で、肩の骨(上腕骨頭)を安定させる役割を果たしています。
脱臼すると、この関節唇が引っ張られて裂けたり、骨から剥がれたりしてしまい、これが肩の不安定性や反復性脱臼の原因となります。バンカート損傷が修復されない場合、肩が何度も脱臼しやすくなります。

反復性肩関節脱臼の術式①

鏡視下バンカート修復術の特徴

鏡視下バンカート修復術は、損傷した肩関節唇を元の位置に戻し、肩の安定性を回復させるための手術です。関節鏡を用いるため、小さな切開で行われ、患者にかかる負担が少ないのが特徴です。

手術の適応

鏡視下バンカート修復術は、以下の場合に適応されます

反復性脱臼:肩が何度も脱臼する場合
肩の不安定感:肩が不安定で、日常的な動作やスポーツ活動に支障が出ている場合
外傷による脱臼:スポーツや事故などで肩を脱臼し、その結果として関節唇が損傷した場合

手術の流れ

麻酔:手術は通常、全身麻酔または局所麻酔で行われます。
関節鏡の挿入と観察:肩に数ミリの小さな切開を作り、関節鏡を挿入します。カメラを通じて肩の内部を観察し、損傷の程度を確認します。肩関節唇が剥がれた場所や裂け目をモニターで確認します。
損傷部分の修復:剥がれた肩関節唇を、骨(関節窩)に戻すためにアンカー(小さな固定具)や縫合糸を使います。アンカーを関節窩に挿入し、関節唇を引き寄せて元の位置に固定します。これにより、肩関節が安定します。
確認と終了:関節内の修復が確認された後、関節鏡を抜いて切開部を閉じます。手術時間は通常1〜2時間です。

反復性肩関節脱臼の術式②

術後のリハビリ

術後のリハビリは肩の機能を回復させ、再び脱臼しないようにするために重要です。リハビリは段階的に行われます

固定期間(術後1〜4週間):肩を安静に保つため、スリングや装具を使って肩を固定します。この期間中、肩を動かさないようにし、組織の修復を促します。
可動域の回復(術後4〜8週間):リハビリ専門家の指導のもと、肩の可動域を徐々に広げるためのストレッチや軽いエクササイズを行います。肩を完全に動かせるようにしていきますが、無理のない範囲で進めます。
筋力トレーニング(術後8〜12週間):肩周辺の筋肉を強化するためのトレーニングを行い、肩関節の安定性を向上させます。徐々に日常生活への復帰が可能になります。
スポーツ復帰(3〜6か月以降):術後約3〜6か月で、スポーツや激しい活動に復帰できるようになります。特に接触スポーツに戻る場合は、肩の完全な回復を待つ必要があります。

手手術のリスクと合併症

鏡視下バンカート修復術は、比較的安全な手術ですが、以下のようなリスクや合併症が発生する可能性があります

感染症
縫合部分の再断裂や再脱臼
血栓
肩の可動域の制限や硬直
神経損傷

結論

鏡視下バンカート修復術は、肩の不安定性や反復性脱臼を治療するための効果的な手術です。関節鏡を用いることで侵襲が少なく、回復が早いのが特徴です。術後のリハビリが重要であり、肩の機能を完全に回復させるために慎重に進める必要があります。

烏口突起移行術

烏口突起移行術は、肩の不安定性を治療するための手術です。肩が頻繁に脱臼する人に特に効果的です。まずは、手術の内容を図を使って簡単に説明します。

手術の手順

図1:健康な肩と不安定な肩の比較
[健康な肩と不安定な肩]

健康な肩と不安定な肩の比較

図2:烏口突起の位置

烏口突起の位置

図にあるように、烏口突起は肩甲骨の一部分で、ここを移動させることで肩の安定性を高めます。
関節鏡という小型カメラを使って、切開を最小限にしながら手術を行います。これにより、回復が早くなります。
烏口突起を本来の位置から、より安定する位置に移動させて固定します。

烏口突起の位置

以下に、この手術の長所と短所を挙げます

利点

肩の安定性が向上し、肩関節が鏡視下Bankart修復術より安定し、脱臼のリスクが減少します。
リハビリをしっかり行うことでスポーツや日常生活に早く戻ることができます。
関節鏡を用いるため、切開が小さく、回復が早いです。

欠点

手術リスクがあり、感染症や神経損傷、血栓のリスクがあります。
手術後、肩の動きが一時的に制限されることがあります。
縫合部分が再び切れることや脱臼するリスクがあります。

烏口突起移行術は、肩の不安定性を治療するための手術です。以下に、この手術の長所と短所を挙げます。
この手術は、肩が頻繁に脱臼する人やスポーツをしている人にとって特に有効です。手術を受けることで、肩の機能を回復し、日常生活やスポーツを再び安心して楽しむことができるようになります。